4.左右楼膝拗歩
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動作順序 図22
  体を少し左に回す。
  右手を顔の前におろし、左手は自然にゆるめる。
  前方を見る。

動作要領
4.「左右楼膝拗歩」(ゾウヨウローシーアオブー)(1回目)
図22
上体を左に回す動きにあわせて、右手は掌外沿で前方をはらいながら顔の前におろす。左手は、手首をゆるめる。

注意事項
図22
左股関節をゆるめて沈め(左上前腸骨棘をわずかに内に引き込み)、腰をわずかに左にまわす。
右手は外旋し、左手はわずかに内旋するが、腕の動きは、体の回転と合わせること。
右手を左胸前側におろすのは回し過ぎ。身法、眼法をあわせること。右手を顔の前におろした時、右手を見る。
腕だけの動きにならないよう注意。また、腰を左に回す動きにつられて、顔を左に回してしまうのは誤り。
顔は正面に向けた状態を保ち、目はまっすぐ右手を見る。
右肩を前に突き出しすぎると中正を失うので注意。

動作順序
図23~24
  体を右に回す。
  左足を右足の内側に寄せる。
  右手をおろし、右股関節の横を通って、右後方上に弧
を描いて肩の高さまで上げ、掌心を斜め上に向ける。
左手は上にあげ、右に弧を描いて顔の前を通り、胸前に達する。       掌心を斜め下に向ける。
  右手を見る。

 

動作要領
 図23
上体を右に回す動きにあわせて、右手は下方に弧を描いて、右股関節のそばまで引きおろす。
左手は上方に弧を描いて、掌心で顔の前をはらうようにあげる。左肘は伸ばし過ぎないよう、ゆるめて沈め、腕の弧形を保って動かす。

注意事項
 図23
体を右に回すが、今度は右股関節をゆるめて
沈める(右上前腸骨棘をわずかに内に引き込む)こと。
このことを心がけておかないと、腰を軸とした太極拳ができない。
図21~23では足は動いていないが、腰を回すことに注意し(臀部を振らない)、脊柱を軸とした動きであることを守り、一動全動であることを忘れない。
腰を回さないで、単に両手を回すと、左手が体の左に外れ、右手が左胸前にずれ込み、右腋下に間隔が無くなるので注意。


動作順序
図23におなじ。

動作要領

注意事項
右腕は腰を回しながら、右肩→右肘→右手の順に動かす。右手が肩の高さまであがってきた時に、腰を十分に回して、顔が右手に対して真正面に向くようにする。
腰の回し方が不十分だと右手を横目で見ることになるので注意。
左腕は肘をあげず、左腋下に間隔を保つこと。
左膝はゆるめて、前に向けておく。体が右に回るのにつられて、右にまわして両膝を閉じてしまわないこと。

 

動作順序 図25
  体を少し左に回す。
  左足踵を左前方に着地させる。
 右腕を曲げ、右手を耳横に近づけ、親指を斜め上に向ける。
左手は腹の前におろし、掌心を斜め下に向ける。
目  視線を左に移してゆく。

 

動作要領
 図25
上体を少し左に回すのにあわせて、左足を上歩して腫を中子く着地させ、腰と股関節をゆるめ、左膝、足首をゆるめる。重心はあくまで右足で支え、左足には移さないこと。
上体は中正を保ち、前後左右に傾けたり、臀部を突き出さないこと。
左手を腹前におろし、右手は腕を曲げて肘をさげ沈め、指を耳横に近づける。右掌心は斜め内側に向ける。
左手は「楼掌」へ、右手は「推掌」へと移行してゆく準備となる。

注意事項
 図25
上体を傾けない。左足の着地は軽く。左足を着地した時に、腰・股関節をゆるめ、左膝と左足首をゆるめないと、 上体が緊張したり、傾き、また、次の弓歩の動作がスムーズに行えないことになるので注意。
両肘ともあがりやすいので、あげないよう注意。
左手は、図24では胸前にあり、図25では必ず腹前までおろして、「楼膝」の準備をすること。左腋下に間隔を保つ。

動作順序
 図26
体を少し左に回しながら、前方に向ける。
左足先を着地させ、右脚を蹴り伸ばし、左弓歩となる。
右手を前に、手首をゆるめて、沈めながら推し出す、
掌心を前に向ける。指先は目の高さを越えない。
左手は左膝の前を払い、左大腿部の外側を押え、掌心を下に向け、指先を前方に向ける。
前方を見る。

動作要領
勁力は、「楼掌」の時は前腕部外側にあり、「座腕」にして押さえる時は掌根に達する。
同時に、右手は、肘をゆるめて沈めながら、徐々に掌心を前方に向けて、前方胸前に推し出す(「推掌」)。
重心の移行とともに徐々に手首を沈めて「座腕」にする。勁力は、掌根に達する。
左手の「楼掌」は、腰の回転ではらい出すように行う。左肘はゆるめて曲げ、腕の弧形を保つ。
右手の「推掌」は、胸をゆるめてわずかに含み、背を伸びやかにして腰から、背中から推し出すようにして、前方
に向けて伸びやかに行う。
「楼掌」と「推掌」が完了したときに弓歩の動作を完了させ、必ず上下の動作を一致させなければならない。
動作の完成時に、体が前に傾き過ぎないよう特に注意する。
上体をわずかに左に回して、右肩が左肩よりわずかに前に出るようにする。頭部は正面に向ける。

注意事項
 図26
推掌している右腕と胸部の角度が90°に近い
と、勁力が順逹に掌心に伝わらない。そのため、上体を少し左に回して、腕と胸部の角度を90°より大きくする。結果として右肩は左肩より少し前に出るが、右肩を過度に前に出し過ぎると、上体がねじれるので注意。ねじれが生じると、仮に右手を引かれたり、或いはそっと上から押さえられると、姿勢が簡単に崩
れてしまう。
第1章の「身型。身法」の項で「中正」の大切さを説いたが、偏りがあれば、支撑八面(しとうはちめん  上下前後、左右へのバランス、張り)ができないので注意。
左手は左膝の前を通って「楼掌」するが、路線がやや弧形になるように。
掌心を下に向けて下を押える時、左肘を後ろに引きすぎると左肩が前に突っ張るので注意。沈肩墜肘。
勁力は、右足踵から右膝、腰、背を通して右手掌根に到達する。
右手の「推掌」を体の外(右)に外さないよう注意。
また、右手の指先は目の高さを越えない。右肘を下に向けて沈める。

動作順序
 図27
体  
重心を右足に移しながら、体を少し左に回す。
足  
左足先を上げ、外側約45°~60°に開く。
手  
両腕を自然にゆるめ、両手は外旋する。
目  
右手を見る。

動作要領
4.「左右楼膝拗歩」
(ス゛オヨウローシーアオデー)(2回目)
図27
右膝を曲げ、左脚をゆるめて伸ばして、足先を持ちあげ、重心を右足に移して座る。同時に体を左に回し、足先を左45°方向に開く。左膝は突っ張らないで、ゆるめてわずかに曲げておく。
両手首の座腕をゆるめる。右腕は、肘をゆるめて沈めた状態を保ちながら、腕全体をわずかに前方に伸ばす。
日は右手か、右手の少し左側を見る。左腕全体をゆるめて、掌心は外旋し始める。

 

注意事項
 図27
上体を浮かしたり、後ろに反らしたりしない。また、臀部を後ろに突きだしたり、上体を前傾させてはならない。
右腕は自然にゆるめてわずかに前に伸ばし、同時に右手首の座腕を体の動きに合わせて徐々にゆるめるが突然ゆるめたり、脱力して指先をさげてはならない。 また、腕があがりすぎたり、 さがりすぎないよう注意。

動作順序
 図28~29
 重心を左足に移し、体をさらに左に回す。
 左足の足裏全面を着地させる。右足踵をあげ、つづいて右足を左足の内側に寄せる。
 右手は左に向けて弧を描き、胸の前で掌心を斜め下に向ける。左手は左大大腿部の外側から左後方、上に弧を描いて、肩の高さまであげ、掌心を斜め上に向ける。
 左手を見る。

動作要領
  図28
左足の足裏を全面着地させ、重心を徐々に左足に移してゆく。これにつれて、右脚を自然に伸ばし、踵を持ちあげて、足を引き寄せる準備をする。
右手は掌心を横に向けて、顔の前を左にはらう。目は右手を見る。この時、視線を右手から離したり、下を見たりすると動作と意識の連繋が途切れることになるので注意する。
左手は、掌心を外旋させながら、左腕を左後にはらい出してゆく。

注意事項
 図28~29
上歩での注意は、図9、10に同じ。図28では右手を見、図29では左手を見る。視線を早く左手に移し過ぎると、右肩があがりやすく、左に偏り、バランスを崩しやすい。
図28では、重心を左足に移し、右踵をあげながら左足先方向に前進する動作と、右手が顔の前を左に向けてはらう動作を協調一致させる。

動作順序
図28に同じ。

動作要領
 図29
体を左に回すのにあわせて、右足を左足の内側に引き寄せる(図10と同じ要領で行う)。右手は、左に弧を描いて胸前におろして、掌心を斜め下に向ける。
右手が下におりてくるのにあわせて左手は、左後方で肩の高さまで持ちあげて、掌心を斜め上に向ける。
顔と体を|一分に左に回して、左手を見る。
図24と同じ要領で、左右が逆になる。

注意事項
図29では、体を左に回し、右足を左足の内側に引き寄せる動作と、左手を肩の高さまであげ、左手を見る動作を協調一致させるのである。これら上下の動作が協調しないと、散漫な動きになってしまう。

動作順序
図30~31
図25~26と同じ。但し、左右の動作が逆になる。

 

動作要領
図25~26と同様の要領で、左右を逆に行う。

 

注意事項
図30~36
右楼膝拗歩、左楼膝拗歩での要領、注意事項は、前記を参照。

 

動作順序

 

動作要領 

 

注意事項

 

動作順序
図32~36
図27~31と同じ。但し、左右の動作が逆になる。

 

 

動作要領
4.「左右楼膝拗歩」(ゾウヨウロウシーアオブー)(3回目)
図32~36
図27~31と同様の要領で、左右を逆に行う。

注意事項

図22~36の左右楼膝拗歩の動作は、野馬分鬃に比べて、手法の動きの変化が大きく、主体もより幅広く動くので、 上肢と下肢の調和が保てるよう、腰を十分に回して歩法を安定させ、両手の手法を協調させるようにする。
楼膝拗歩の「推掌」は比較的難度の高い動作である。下肢の動き(後脚の蹴り出しと重心の移動)、体(腰)の回転と、腕の動き(肘、手首、掌心)が適切に組み合わされなければ、全体として乱れた動作や不十分な動作になってしまう。
特に多く見られる誤りは;
1)弓歩をゆっくり安定して行えないため、足の動作が先に終り、手が遅れて、上下が不一致となる。
2)1)と関連して、体を早く前方に回してしまい手が体の横、または後に残ったままで下肢が動き出すので、手が遅れてしまう。
3)肘をゆるめて沈めながら、推し出すのでなくて、肘を横に張り出して推したり、手首だけを沈めて推し出し、肘が浮きあがっている。
4)座腕が不十分。あるいは、反対に座腕が深すぎて腕全体が緊張する。
などである。
「推掌」は、肩をゆるめて沈め、肘を外側に張らないように下に向けて沈め、手首は徐々に沈めて座腕にする。
勁力は根節(肩)→中節(肘)→梢節・末節(手首)の順に伝達させるように行い、柔の中に剛を含むようにして、柔らかく伸びやかな動きの中に張り(弾力性)をもたせるようにする。

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