動作順序  図92~93
  重心を右足に移しながら、体を右に回す。
 左足先をあげて内側に入れて着地する。
 左手を下におろし、弧を描いて腹の前を通り右胸前にあげる。掌心を内側に向ける。
右鉤手をほどき、掌心を斜め右外側に向ける。
 右手を見る。

動作要領
10.「雲手」(ユンショウ)(1回目)  図92~93
重心を右足に移しながら、上体を右に回す。同時に、左足先を内側に回し入れて正面(起勢の方向)に向ける。
左手は座腕をゆるめて少し下におろし、体が右に回るのにあわせて肘をゆるめて曲げ、前腕部を外旋させながら腹前を通り、右胸の前にあげて掌心を内側に向ける。
右手は、鉤手をゆるめてほどき、掌に変えて掌心を右横(外側)に向けて張り出す。指先を上に向け、手首をゆるめて座腕にする。
勁力は右手の掌根に達する。
右股関節を折り込んで、重心を右足に十分に移し、左脚はゆるめて自然に伸ばし、足先を内側に回し入れる。
体と顔を十分に右に回し、右手をまっすぐ見る。

注意事項  図92~93
上体を前傾したり、下を見たりしない。臀部を突き出さない。
左手を外旋させて、内側に回し入れる動作と、左足先を回す動き(拍脚)は協調一致させる。
左手首を「折腕」にしたり、左肘を伸ばさない。
上体が立ちあがらないよう、右股関節を折り込んで沈める。
体は右に十分に回して、右手をまっすぐ見る。
左腋下に間隔を保つよう、左腕は肘を沈めて弧形を保つ。
体を十分右に回す。

動作順序   図94
 重心を左足に移しながら、体を左に回す。
 右脚を伸ばし、右足踵をあげる。
 左手は顔の前にあげ、左に向けて弧を描いて払う。
掌心は内側に向けたまま。右手は下に、左に弧を描いて腹の前まで払い、掌心を内側に向ける。
  左手を見る。

動作要領  図94
重心を左足に移しながら、上体を左に回す。
左手は、掌心を内側に向けたままで顔の前にあげ、続いて左横に向けてはらい出してゆく。
右手は下に押えおろし、体が左に回るのにあわせて、肘をゆるめて曲げ、腕を弧形にして、腹前まで弧を描いてはらう。前腕部を外旋させながら、掌心を内側に向ける。

注意事項  図94
右腕の肘が伸びてまっすぐなったり、「折腕」にしない。
左腕の肘をあげない。但し、肘を下にさげ過ぎると、棚勁を失うので注意(前腕部を床面に対して約45°の角度に保つ)。
腕だけを左に回さない。腰を十分回転させながら、腕を左に運ぶ。
左腕の動きに対して、体を左に回すのが早過ぎると左腋が閉じられて、1胡勁を失う。左腕上腕部と胸部の角度が90°以上で、動きにつれてその角度を徐々に拡げてゆくようにする。
左膝を左方向に開かないよう注意。

単鞭は雲手と同様に、左腕で左方向にはらい出す勁力と、掌を返して推し出す勁力を含んでいるが、2つの勁力が途切れることなく一挙動で行わなければならない。
図9oで、踵を着地する動作と、図91の弓歩を行う動作が途切れないよう注意する。体が徐々に左に回るのにあわせて、左足を徐々に持ちあげ、左膝を進行方向に向けて 徐々に開きながら、下腿部を膝の下からゆっくりと前方に伸ばし出して踵を着地する。着地したらすみやかに左股関節、膝、足首をゆるめ、同時に、右足が重心を支えながらゆっくりと弓歩の蹴り出しを始めてゆく。
体が回ってから突然、上歩したり、体が回っていないのに無理に上歩すると、上肢の動作も途切れたり、突っ張ってしまうので注意する。
左腕は、体の回転と下肢の動作に協調させて、徐々に左にはらい出し、徐々に掌心を返してゆく。
掌心を返すのが早過ぎたり、遅過ぎて最後に突然返すと、勁力が途切れてしまうので注意する。
単鞭の体の回転する幅度は比較的大きいので、左腕の動作も、大きく弧形を描くように行う。


動作順序  図95
 体をさらに左に回す。
 右足を左足の内側に寄せ、右足先を前に向けて着地させる。
 左手は掌を返しながら、左に向けて、払い、押し出す。指先は目の高さを越えない。右手は左胸の前に弧を描いてあげる。掌心を斜め内側に向ける。
  左手前方を見る。

動作要領 図95
重心を、ひき続き左足に移し、体を左に回しながら、右足を左足の近くに寄せ、足先を正面に向けて着地する(「側行歩」)。
左手は掌心を徐々に外側に向けて返す。左横で指先を上に向けた立掌にし、手首を座腕にし、肘を沈めて、腕を下向きの弧形にして、外側に推し伸ばす。
右手は、弧を描いて左胸前まであげて、掌心を斜め内側に向ける。
勁力は左手の掌根に達する。

図92~95の「左雲手」の動作の、「側行歩」歩法は、上体を中正にして臀部を収め、上体を左右に回す動きにあわせて、重心を左右に移行させる。
片方の脚は曲げて重心をしっかりと支え、もう片方の脚は引き寄せて足先から着地させる。足を引き寄せて「雲手」を完成した時の両足の横幅は約10~20cmにする。
また、両手は、上体の回転と重心の移行にあわせて、「雲手」の手法を行い、肩を沈めて肘をさげ、腋をゆったりと開いて、両腕は弧形を保つようにする。

注意事項  図95
上体を左に傾けない。また、臀部を後ろに突き出して、上体を前傾させない。
左手は徐々に返して、早過ぎないよう、また、遅過ぎないよう注意。第1章の「手法」の「雲掌」の項と歩法の「側行歩」の項を参照。 体を十分に左に回して、左手をまっすぐ見る。
左腕の方向は左約60°から真横までで、各自の腰が回転可能な角度にあわせる。
右足を左に寄せる時は、腰を十分左に回し、左股関節を折り込んで沈め、重心を左足に十分かけてから、ゆっくりとコントロールして引き寄せる。
急に引き寄せたり、右足で蹴るようにしてはならない。
右足を寄せた時、体を右に回さないよう注意。
左足で立ち上ってしまったり、重心の起伏が生じないよう、特に注意する。


動作順序  図96
 重心を右足に移しながら、体を右に回す。
 右足踵を着地させる。
 右手は顔の前まであげ、右に弧を描いて払ってゆく。
掌心は内側。左手は弧を描いて下におろす。掌心は内側に向ける。
 右手を見る。
図97
体  
重心をさらに右足に移しながら、体を右に回す
足  
左足踵をあげる。
手  
右手は顔の前を通り、右に向けて弧を描いて払う。掌心は内側。左手は下におろし、右に弧を描いて腹の前
まで払う。掌心を内側に向ける。
日  
右手を見る。

動作要領  10.「雲手」(ユンショウ)(2回目) 図96~97
重心を右足に移しながら、上体を右に回す。
右手は掌心を内側に向けたままで顔の前にあげ、体ゆく。
同時に、左手は下に押えおろし、掌心を内側に向けて、腹の前まで弧を描いてはらう。
左踵を持ちあげる。

注意事項  図96~97
体重を左足から右足にスムーズに移すこと。両足にかけたままにしない。左肘を伸ばして腕をまっすぐにしないよう注意。
雲手は単なる腕の外まわしではなく、腰と脊骨を軸にして(「腰脊為第一主宰」)、「雲掌」と「側行歩」が組み合さったものである。
中正を保つこと。


動作順序  図98
 体を右に回す。
 左足先あげ、左横に出して、足先を着地させる。
 右手は掌心を返しながら、右に向けて払い、押し出す。
右手首を沈め、掌心を右外側に向ける。指先は日の高さを越えない。左手は右胸の前に、弧を描いてあげる。
掌心を斜め内側に向ける。
 右手前方を見る。

動作要領  図98
重心をさらに右足に移しながら、上体を右に回し、左足を左横に一歩踏み出して、足先を正面に向けて着地させる。
右手は掌心を外側に返して立掌にし、手首を沈めて座腕にして、外側に推し伸ばす。
左手は、弧を描いて右胸前まであげて、掌心を斜め内側に向ける。
勁力は右手の掌根に達する。

注意事項  図98
両手を右に移動する時に、左足を左に進めるが、足先を着地してから、踵を左に押しやるように置けば、「八字脚」にならない。

動作順序  図99~103
図94~98と同じ。

動作要領   図99~100
図94~95の動作と同様の要領で行う。
       図99~105
雲手は、「雲掌」の項を参照。
10.「雲手」 (ユンショウ)(3回日)
図101~105
図96~100の動作と同様の要領で行う。

図104~106
図94~96と同じ。

図94~105「左雲手」の3回の連続動作において、動作全体は、腰を横軸、背骨を縦軸にして、両手の「雲掌」の手法と、両足の「側行歩」の歩法と協調させて「上下相随」を保って行うようにする。
また、「雲手」の動作は、特に柔らかく穏やかに行い、速度を均一に保ちむらの無いように行い、途切れること無く動作を連貫させて行う。