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2.「左右野馬分葉」(ス゛オヨウイェーマーフェンガン)(1回目)

動作順序
重心を右足に移しながら、体を少し右に回す。
左足を右足の内側に寄せる(寄せた足先は着地しても良い)。
右手は弧を描いて胸の前に収める。肘を少し下げ、掌心をFに向ける。左手は体の前を通り、右下に弧を描き、右手の下で掌心を上に向けてボールを抱える(抱掌)。右手を見る。
動作要領

図5 「抱掌」は、上体を右に回し、重心を右足に移し、左足を寄せる動作にあわせて同時に行う。つまり、次の動作を一挙|二行う。両手首の座腕をゆるめ、両肘、両肩と両腋下(1カ骨部分)をゆるめる。右腕
は少し右外側に張|)出しながら上に持ちあげ、弧を描いて胸の前に収め、掌心を下に向ける。左腕は肘を曲げて腕の弧形を保ち、指先が先行して右下に弧を描いて、腹の前で掌心を上に向ける。両掌心を上下で向い合せて「抱掌」を完成する。この動作にあ
わせて、重心を右足に移し、体を少し右に回し(右約30°)、左足を右足の内側に寄せる。
「抱掌」の完成時には、右手は1すをさげ、手首も少し沈めて、指先をやや上向き|二するこ両腕と両掌で、柔らかくボールを抱えるようにし、脇をゆったりとさせ、肩を沈め、胸をゆるめてわずかに含み、背中を伸びやかに広げる(含胸抜背)。
注意事項
上体を右に回すが、ねじれないよう、また前傾しないよう、臀部を後ろに突き出さないよう注意。
膝を伸ばして立ちあがらない。左足先は着地しても、しなくてもよい。左膝を閉じない。 右手を右外に回し過ぎない。腰の右回転につれて手が動くのであり、図4(下按)からの動きの流れ(勁)を大切に。右手は肩の高さを越えない。右肩、右肘をあげない、両肩を水平に保つこと。

動作順序
  体を少し左に回す。
  左足踵を左前方に着地させる。
  両腕を分け始める。
  右手前方を見る

動作要領
左足を上歩して両腕を分け始める時、右腕は肘と手首を沈めて少しさげ、左手は腹前から胸前へとあげてゆく。
この時、上体を傾けたり臀部を突き出したりしないようにして、右足にしっかりと重心をのせ、全身のバランスを保つ。左足は踵を軽く着地させる(上歩の歩法での「虚実分明」をはっきりと行うために、この動作では重心は必ず右足で保ち、左足に移さないこと。次の図7で重心をゆっくりと左足に移して、虚実を明確にする)。
注意事項
右股関節を折り込み、左足は膝をゆるめて踵からそっと着地させる。
一般に順弓歩では両足の横の幅が狭く、拗弓歩ではそれが広くなるが、野馬分業の場合は、順弓歩であるが、勁の方向が斜め方向(例。昇)であり、足を斜め方向(但し、足先は進行方向)に踏み出すので、横幅が広くなる。野馬分葉の横幅は20~30cmを標準とし、体格や運動能力によって適宜調整する。足や手の位置、腰の向き等は、勁力に大いに影響を与る。

動作順序

体  体をさらに左に回す。
  左足先を着地させ、右脚を蹴り伸ばし、踵を蹴り出して 左弓歩
となる。
  左手を顔の前に上げ、掌心を斜め上に向ける。右手は右股関節の横に引きおろして、掌心を下に向けて、指先は前方に向ける。
  左手前方を見る。

動作要領
左手は前方斜め上、外側に分け開く。肘を少し横に張り出して腕を弧形にしてはらい出す「挒」の動作を行う。
右手は後方斜め下に引き寄せて押さえ、手首をゆるめて沈め(座腕)、肘をゆるめて曲げて「採」の動作を行う。
両手を分け開く動作を完了した時に、弓歩を完成させて上下を一致させる。
右足は、足先を軸にして踵を後方に蹴り出して足先が進行方向に向って、右斜め約45~60°に向くように調整する(足型を参照)。
勁力は、左手は掌背と前腕部の外側に達し、右手は掌根に達する。
注意事項
右足の踵を蹴り出して弓歩にする。左膝は左先を越えない。体重が左足に偏らないよう注意。
中正を保つこと。右膝は曲|デすぎたり、萎えた状態にしない。突っ張らない程度に蹴り伸ばすこと。左手は左
腿部の上で、掌心を斜め上に向ける。左手首を折らない(「折腕」にしない )よう注意。
左肘の肘頭が下を向き、腕が下に向いた弧形を作ている人がいるが不適切である。分鬃の手法は、左手は前方斜め上、外側に向かってはらい出すのであるから、左肘が少し横に張り出した弧形にする。但し、肘が持ち上がって、肩が緊張することは避けなければならない。
左掌心は斜め上に向け、前腕部に棚勁を持たせる。右手指先は、前方に向け掌根小指側をわずかに沈める。
体は前方やや右斜めに向く。体を左に回し過ぎる(正面に向ける)と、挒・靠の動きが無くなるので注意。
身法・手法ともに橋雀尾の棚勢の場合と異なるので区別すること。野馬分髪での上体、腰の向きは、攬雀尾の場合よりもやや右側に開く。
足の動きが手の動きより先に終りやすいので、同時に終るよう注意。
腰を回す動きと、右脚を蹴り伸ばす動きを二段階に分解して行わないこと。蹴りながら回し、回しながら蹴って一動作で行う。
必ず、右足の踵を蹴り出して、足先の方向を調整し、正しい弓歩の歩型を作ること。

 動作順序
 重心を右足に移しながら、体を少し左に回す。

 左足先を上げ、外側約45°~60°に開く。

 両碗を自然に緩める。

 左手を見る

 

動作要領
2.「左右野馬分髪」
(ズォーヨウイエマーフンゾン)(2回目)
上体を後ろに座らせながら、右足の膝を曲げて重心を後ろに引き寄せる。左足を伸ばして足先をあげる。
腰を軸に上体を左に回すのにあわせて、左足先を外側に約45°開いてゆく。
上体を立ち上がらせたり、傾けたり、臀部を突き出したりしないよう安定させて中正を保つ。
重心を後ろ足|こ移すには、まず、腰・股関節をゆるめて、右膝を斜め前方に(右足先の方向)に向けて曲げることにより、上体を後方に引っぱるようにして行う。右股関節を後方に引き、沈める。左脚は自然にゆるめて伸ばし、足先を持ち上げるが、膝は伸ばしきらないで、ゆるめてわずかに曲げた状態を保つ。
単に左足を突っ張って後方に重心を移動させると、上体が立ち上がったり、前後に傾くことになるので注意する。
両腕は自然にゆるめ、右手首の座腕をゆるめて次の手法に移行するのに備える。

注意事項
上体を後ろや前に傾けない。臀部を突き出さない。
腰と股関節をゆるめてから、右股関節を折り込み、右膝を十分曲げること。
右膝が内側に入ってねじれた状態にならないよう注意。
右膝は膝内側上部の内側広筋をしっかり張って支え、膝関節に無理な負担をかけないようにする。

動作順序 図9~10
   重心を左足に移し、体をさらに左に回す。

   左足の足裏全面を着地させる。右足踵をあげ、つづいて右足を左 足の内側に寄せる。

  左手を胸の前に収め、肘を少しさげ、掌心を下に向ける。
右手は体の前を通り、左下に弧を描いて左手の下で、掌心を上に向
けて、ボールを抱える。

目  左手を見る。

動作要領
左手の掌心を下向きに返して、胸前に引き寄せてゆく。右手は、肘をゆるめて曲げ、指先が先行して腹前に弧を描きがなら抱え込み、掌心を上向き|こ返しかける。
左足は、足裏を全面着地させ、重心を徐々に左足に移してゅく。これにつれて、右脚を自然に伸ばし、踵を持ちあげて、足を引き寄せる準備をする。
重心を左足に移動するのにあわせて両手で「抱掌」を作りかけるが、右腕の動作が遅れないよう、また、右肘を伸ばしてしまわないよう注意する。

注意事項
図9~10 上体を前傾させたり、起伏させたりしない。右足を引き寄せる動きは、腰を左にまわす動きにあわせること。右足を高くあげたり、またズルズル引っ張ったりしないc右足で床を蹴るようにしたり、急速に寄せた|)しない。

 

 

動作順序
図9に同じ

動作要領
体を左に回すのにあわせて、右膝を持ち上げ、引きつけるようにして、右足を左足の内側に引き寄せる。
足先は着地しても、しなくても良いが、着地した場合でも休止してしまうのではなく、すみやかに次の上歩の動作に移る意識を保っておく。
右足を引き寄せた時に、左手が胸の前で掌心を下に向け、右手が腹前で掌心を上に向けた「抱掌」、を完成する。

注意事項
図10で、右足は左足の後ろに着地せず、左足の横
に置くこと。臀部を突き出さないよう注意。

 

 

動作順序 図11~12
図6~7と同じ。但し、左右の動作が逆になる。

動作要領 図11~12
図6~7と同じ要領で行う。但し、左足踵は、図7のように後方に蹴り出して角度を調整する必要はない。

注意事項 図11~17
右野馬分髪、左野馬分業での要領、注意事項は図9~10に同じ。

 

野馬分髪には「挒」の手法の他、肩部と背の外側を用いる「靠」(分靠)の用法も含まれており、前腕部を用いれば「挒」、肩・背を用いれば「靠」となる。
動作を完成したとき、両腕は弧形を保ちながら、互いに反対方向に分け開いて張りを持たせる。(特に、上の腕は肘を横に張り出して棚勁を持たせる)。
図6~7では、右足(後足)は踵で地面を蹴るようにして伸ばす。右足の足先を軸にして踵を後方に向けて蹴り出し足先の方向が45°~60°になるように調整する。両膝は足先の向きと一致させる。
左足(前足)は曲げて上体を支え、床面を踏みしめて「弓歩」を完成する。
野馬分髪の歩型は、「順弓歩」であるが、斜め外側の方向に「例」の動作を行うので、一定の横幅をとる必要があり、「拗弓歩」と同じ横幅(約20~30cm)にして行う。

 

動作順序
図13~17 図8~12と同じ。但し、左右の動作が逆になる。

動作要領
2.「左右野馬分鬃」(3回目)
図13~17は図8~12と同じ要領で行う。

注意事項

左右野馬分髪の動作から始まる「歩行」は、速度をゆっくりと均―に保って行う。
上歩の時には軽快に行い、弓歩の定式の時には安定させる。
「歩行」における重心の移行は、腰を軸にして上体が左右に回るのにあわせて行うようにし、手法の変化と常に協調させる。
「歩行」動作が不安定な状態であれば、上体が不必要にゆれたり、腰・背・胸・肩の各部が緊張して、全身の動作の協調性を妨げる原因となるので、バランス良くスムーズ|こ「歩行」iが行えるようにする。
弓歩の完成と分髯の完成は一致させ、同時に終わらなければならないが、手より弓歩が先に終ってしまう人が非常に多い。これは前脚の膝を曲げて引っばるようにして重心を移動させる場合に多
い。弓歩の要領は、まず重心を支えている後ろ脚がゆっくりと蹴り伸ばす動作を行うこと。この時、前脚はゆるめておき、後脚が伸びてくる結果として、前郵の膝が自然に、徐々に曲がってゆくのである。つづいて、前脚が上から下に徐々に踏みしめるが、後脚は依然として蹴りつづけている状態を保つこと。腰と股関節をゆるめて行い、動作の完成時には両足裏に力が加わつているようにする。
このようにしてはじめて、ゆっくりと重心をコントロールしながら弓歩を行うことができる。決して前脚を後脚より先に動かしたり、前脚の膝を曲げて重心を前方に引っぱるような動作を行わないこと。上記の弓歩の要領は、楼膝拗歩、攬雀尾、単鞭、双峰貫耳、穿稜、閃通臀、搬欄捶、如封以閉の動作においても同様に注意して行わなければならない。

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