「双峰貫耳」(スァンフォングヮンアル)
動作順序 図120
体 体を右に回す。
足 右膝を曲げ戻し、右足先を自然に垂らす。
手 左手を右に弧を描いて回す。両手の掌心を返して、顔の前で斜め上に向ける。両手の幅を顔の幅にする。
目 両手の前方を見る。
動作要領 図120
右足は、右膝を蹴り出した高さに保ったまま、小li壁部を徐々にゆるめて収め、足先を下に向ける。
体を右に回しながら、両掌を外旋させて、顔の前、膝の上で掌心を斜め上に向ける。
両肘を少し下に沈めるが、両手を上体に近づけ過ぎて、肩や腋を絞め縮めてはならない。
右足小1)壁部を収める動作と、両手の掌心を顔の前で返す動作は同時に終るように協調させる。
右足だけを急に収めたり、左手が遅れないように注意する。
注意事項 図120~123
重心の移動に注意。右足を降ろす時は、左股関節をゆるめながら膝を曲げ、下に沈んでから着地し、っくりと重心を前足に移してゆく。両足の横幅が無いのは不可。図120~122で上体が後ろに反りやすいので注意。
両拳は、股関節のそばを通る時、前腕を内旋しながら徐々に握ってゆき、まず肩を沈め、次に肘をゆるめて前に打ち出す。
拳の高さは、こめかみと同じ高さで、両拳の間隔は顔の幅。拳眼は斜め下。〔第1章の2.手法の11)貫拳の項を参照。〕
拳を握る時は小指の方から順に握り、五指を一度に握らない。反対に、図124~125で拳を掌に変える時は、親指の方から順にほどいてゆく。
図120~123を通して、上体をまっすぐに保ち、上肢の動作が遅れないように注意する。
動作順序 図121
手 両腕を下に、右膝の両脇まで払いおろす。掌心を上に向ける。
動作順序 図122
足 左膝を曲げて沈め、右足踵を右斜め前方約30°に着地させる。
手 両手は弧を描いて股関節の両脇におろす。掌心を斜め上に向ける。
目 前方を見る。
動作要領 図121~122
両手で膝の両脇をはらいおろす。両手が膝のそばを通る頃に、徐々に左膝を曲げて上体を沈めてゆく。
これにあわせて、右膝を徐々に下におろし、前方に踵を着地する。着地する位置は、前方右斜め約30°で、「順弓歩」の横幅(10~15cm)がとれるように行う。
両足の横幅が狭すぎたり、右足先が30°以上外側に開いて、両足が交差しないよう注意する。
腰、股関節をゆるめて、上体の中正を保つ。
重心は左足で支えて、右足に移さないよう注意する。
両手は股関節の横で、掌心を斜め内側に向ける。
動作順序 図123
体 重心を右足に移す。
足 左脚を蹴り伸ばし、踵を蹴り出して、右弓歩となる。
手 両掌を外側に分け開き、つづいて、内旋させながら拳にかえ、両横から上に、前に弧を描いて打ち出す。
両拳眼を斜め下に向ける。両拳を目の高さに置き、幅は顔の幅にする。
目 両拳の前方を見る。
動作要領 図123
両掌を徐々に拳に変えてゆく。弓歩になるのにあわせて、両腕が内旋しながら、体の横で少し後ろに、外側に開き、つづいて下から上に、外側から内側にゆっくりと弧を描いて顔の前方に打ち出す。(「貫拳」)。
腕を曲げすぎて顔の前に近づけ過ぎないように、両拳の動きは前方に向けて伸びやかに行う。
「貫拳」の完成と弓歩の完成は必ず一致させる。
胸をゆるめて背中を伸びやかにして中正を保つ。
肩を沈めて肘を少しさげて、肩や肘がこわばらないようにして、両腕は弧形を保つ。 勁力は、両拳面のやや内側(人さし指側)にある。
一般に「貫拳」の勁力は拳面にあるが、両手で行う貫拳で、勁力を拳面の全面で働かせると両肘があがってしまうので、内側で力を働かせるようにする。
「貫拳」の熟練度が足りない場合に見られる主な欠陥と注意点は:1)貫拳の動作が完了する前に、弓歩が終ってしまう。(上下不一致);前の右蹟脚から、図121まで左足で重心を支えてきた結果、左足の負担に堪え切れず、図122で重心を右足に移してしまうことが多い。
また、本章第26頁で述べた弓歩の基本要領から外れて、前脚で重心を引っばってしまうことも原因となる。
さらに、下記の手法の問題も影響する。図122の動作では、極力、重心を左脚で保持すること、また、弓歩の基本要領を習得することが求められる。
2)拳が弧を描かず、肘、肩があがる:図122~123で、両拳が内旋しながら、弧を描く運動に熟練していない、または、体の前で小さな弧しか描けなかったり、手首をこね回す例が多く見られる。
結果として、月十・肩があがり、体が前傾する。図122でまず、肩・肘・手首を十分にゆるめて(放髪ファンソン)から、徐々に掌を拳に変え、腕を内旋させながら両腕全体を少し後ろ(体の横)まで引き、少し外側に開く。
この時は、肩関節を回して腕全体を動かす。
手先や手首だけを動かしてこね回してはならない。
拳を上にあげてゆく時には、肘をゆるめて下に沈めるようにしながら拳を肘より少し高い位置まであげ、ひき続き腕を内旋させながら、拳が先導して肘と腕全体を引っぱるようにしてあげてゆく。
必ず、腕の各部の関節をゆるめて行い、動作の途中では拳はゆるく握り、動作が完成する時には、意識を集中するのにあわせて軽く握り締めるように変化を持たせて行う。