5.「手揮琵琶」(ショウホイピーパ)
動作順序 図37 手揮琵琶
体 体を少し左に回しながら、左足に重心を移す
足 右足踵をあげ、つづいて右足を半歩前に寄せ、足先を
着地させる。
手 両腕を自然にゆるめて、右手を少し前にのばす。
目 右手を見る。
動作要領
図37 「跟歩・ゲンブー」の歩法の要領は白鶴亮翅の要領と同様に行う。
必ず、体を左に回すのにあわせて、右足を引き寄せること。上体の中正を保ち、重心を十分に左足に移してから、体を左にまわすこと。
上体を前に傾けたり、臀部を後ろに突き出さない。
重心は一定の高さを保ち、右足を寄せた時に左脚で立ちあがってしまったり、左膝がグラついたり、内側に入ってしまったりしないようにする。
膝を左足の真上に固定しておいて、腰を左に回し、右足を寄せる。
右腕は、手首をゆるめながら、上体が左に回るのにあわせて前方に伸し出すようにする。左腕も自然に緩める。
注意事項
図37 左股関節を折り込んで、体をわずかに左に回すが、跟歩の要領、注意事項は、図17~19を参考。
体の回転を使わないで右足だけを引き寄せてはならない。体を左に回しながら、全身を前に送るように。
右手は、体重が前に移動し、体が回転するのにつれて、座腕がゆるみ、右肘もわずかに伸びる。但し、
右肘が伸びすぎすぎると、肘、肩が上にあがり、沈肩墜肘の要求に反するので注意する。
動作順序
図38
体 体を右に回しながら、重心を右足に移す。
足 右足踵を着地させ、足先を約45°外側に向ける。左
足踵をあげる。
手 右手を胸前に引き寄せ、掌心を斜め下に向ける。左手
は前に、上にあげ、掌心を斜め下に向ける。指先は目
の高さを超えない。
目 右手の前方を見る。
動作要領 図38
上体を右に回し、重心を右足に移すのにあわせて、右手は、肘をゆるめて沈めながら外側に張り出し、掌心を斜め下(斜め外側)に向けて、胸前に引き寄せる。左手は、左大腿部のそばから前方、顔前に弧を描いてあげる。
両腕は弧形にして、両肘を少し外側に張り、両腋の下を開けて、両手の掌心を斜め下に向ける。
胸をゆるめ、わずかに広げてゆったりとさせる。体を右に回すのにあわせて、右手を右横に引く動作と、左手を前方に伸ばし出す動作を協調させて行い、両手、両腕で「開」の動作を行う。
注意事項 図38
体を右に回す時、右股関節をゆるめて折り込むこと。
右足先の方向は右斜め45°より大きく開かないよう注意する。
回した時の体と顔の方向は右斜め約45°。
左腕を前方にあげる時、左肘を沈めて腕の弧形を保つ。
初級者には、左肘が伸び、左肘全体が直線になり、左肩があがってしうまう傾向がよく見られるので、
特に注意する。
両肘を外に少し張り出すが、手首より低くする。特に、右肘、右肩があがらないよう注意。
“開"の動作を明確に行うこと。
動作順序 図39
体 体を少し左に回す。
足 左足踵を少し前に移し着地させる。
手 両手を外旋させ、左手は手首を沈め、掌心を右に向ける。
指先は目の高さを越えない。右手は左肘の内側で掌心を左に向ける。
目 前方を見る。
動作要領
図39 上体を左に回し、前足踵を着地する「虚歩」を行なうのにあわせて、両腕を内側にしぼるようにし、前方に少し推し出すようにしながら、両手の掌心を内側に向ける。両手首をゆるめて、わずかに沈めて「座腕」にする。
勁力は、両手の掌根に達する。
両肩を沈め肘をさげて、両腕全体を「合」の状態にして、両手ではさみ押さえるょうする。
主体は、前方斜め右側向きで、顎を引き、頭部を持ちLげ、胸をゆるめてわずかに含み、背中を伸びやかにする。臀部を収めて中正にする。
左膝は突っ張らず、ゆるめて少し曲げておく。
注意事項 図39
上体はやや右斜め前向きであり、正面に向けない。
臀部を突き出して、上体を前傾させない。 右膝を内側に入れない。
左膝が伸びきったり、左足先を緊張させて反らせたりしない。
体重を左足にかけてはならない。体を左に回しながら、両手が「合」の動作をするのにあわせて、左踵を少し前に出して着地し、着地したらすみやかに左股関節、膝、足首をゆるめる。体重は右足で保持する。
右手と左肘の間は腕1本位の間隔を空けるが、空け過ぎないよう注意。右腋下に隙間を保つこと。両掌根を沈めるが、両手首は緊張させない。
定式では両手を合わせてやや押し出すように。
「三尖対」(鼻先、左指先、左足先の一致)に注意。
“合"の動作を明確に表現すること。
動作順序 図40~41
体 体を少し右に回す。
手 両腕を自然にゆるめ、右手は下におろして、右股関節
の横を通り、右後方上に肩の高さまで、弧を描いてあ
げる。掌心を斜め上に向ける。左手は少し前に伸ばし、
掌心を斜め上に向ける。
目 視線を右方向に移す。
図41 倒巻肱
手揮琵琶は前後の動作(楼膝拗歩、倒巻肱)に較べて動きの幅度が小さく、短い動作である。それだけに、図37~39を動作、呼吸、意識を組み合わせてゆっくりと伸びやかに行わなければ、前後の動作のリズムと断絶してしまい、太極拳の連綿とした動きから外れてしまう。
図37では、全身をゆるめ、頚部(うなじ)を上に伸ばし、体を左に回しながら、右手を伸ばし出し、右足を寄せる。右足はコントロールしてゆっくりと寄せる。次の動作に備えて小さく、短い「補助呼吸」(一般には吸気)を行う。
図38で、重心の移動、体の右回転にあわせて、胸をゆるめて広げ、下腹部を充実させて下に沈め、はっきりとした吸気を行う。両手を広げて「開」の動作を行う。右手で相手の右手首をつかんで胸前に引き寄せ、左手を相手の右腕上腕部または肘関節部に触れることを想定する。両手の掌心、指先の方向が「開」の勁力に関係することに意識をはらう。目は体の前方(右約45°)を見るが、次に移行する左手の方向にも意識を配る。
図39で、体を少しずつ左に回し、虚歩を作るのにあわせて、両肘を沈め、両掌を内側に返して(外旋させて)、相手の腕をはさみ、押える「合」の動作を行う。体を回し、左踵の位置を調整して腰。股関節をゆるめる動作と、両掌を合わせる動作は、協調させて、ことさらにゆっくり、沈着に行う。動作にあわせて、下腹部をさらに充実させて沈めて、ゆっくりと深い呼気を行う。
全身各部の関節をゆるめ、頚部(うなじ)を上に伸ばす。日は左指先の上から前方を、焦点を絞るように注視して、意識を集中する。
動作を落ち着け、意識を集中したら、滞りなくゆったりと沈め倒巻肱に移ってゆく。